委嘱活動

Commission


委嘱作品一覧

もどりうた ―名古屋の民謡による―

いくさ三題

男声合唱と連弾ピアノのための連詩 いのちのうた

「へんしんのうた」

同声合唱とピアノのための組曲「夏の庭」

無伴奏同声三部合唱組曲「旅−悲歌が生まれるまで」

同声三部合唱曲「ゆうぐれ」


「雪日讃 五題」 −男声合唱とピアノのために−

「樹木派」−男声合唱と複数(3人以上)の楽器奏者による−

「きみはトタン屋根の下ではなれ星を数える人ではない」

「アンパンマンのマーチ」/「手のひらを太陽に」

伊東静雄の詩による交声曲  <<曠野の歌>> 

見上げてごらん夜の星を

谷川俊太郎の氏による詩歌集 <<生まれたよ ぼく>>


解説

もどりうた ―名古屋の民謡による― (作曲:戸島美喜夫)(1981)

 委嘱の話は名古屋市によって提示された。「ジョワイエもいつかは委嘱を…」という希望はあっても、それはまだ夢の段階でしかなかった当時、この話はまさに「青天の霹靂」であった。「地元の民謡に基づく合唱曲を地元の作曲家に」という条件のもと、第1回演奏会ですでにその音楽を経験している戸島美喜夫氏に白羽の矢が立った。届いた譜面の、かつて見たことのないような形式(これは実際に見てみないと実感できない)に対する戸惑いは、時が経つにつれて、かつて経験したことのない音楽的感動へと変わっていった。

 初演:1981年11月6日、「須道夫指揮による合唱の夕べ」(市民芸術劇場)
    また、翌年のクール・ジョワイエ10周年記念演奏会において、改訂版による再演が行われた。
その後数曲が都度再演されてきたが、2010年5月2日「Tokyo Cantat 2010」にて全曲再演された。


いくさ三題 (作詩:石黒真知子 作曲:戸島美喜夫)(1990)

 クール・ジョワイエ5ヵ年計画における最初のビッグ・プロジェクトとして、再び戸島氏への委嘱が行われた。正式な委嘱依頼は1988年7月。作曲者の自由な発想で、という趣意を示した上での委嘱だった。一度委嘱を経験した作曲家ということもあり、話はスムーズに進んだ。詩人の石黒真知子さんとの協作のことも早い段階で決まり、ジョワイエとしては、ひたすら作品の完成を待てばよいという比較的楽な立場にあったといえる。反面、作者の産みの苦しみは相当なものであったようで、全曲の完成は演奏会1ヶ月前。それからの1ヶ月間は、ジョワイエにとって文字通りの阿鼻叫喚であった。結局演奏会での初演は、完成からは程遠い出来となってしまったが、「いずれ近いうちに再演を」というムードは強く、早くも三善以降の選曲候補に上がっている。

 初演:1990年9月15日、クール・ジョワイエ第7回演奏会
再演:1996年1月20日、クール・ジョワイエ第9回演奏会


男声合唱と連弾ピアノのための連詩 いのちのうた(作曲:三善 晃)(1993)

 三善 晃氏への一連の委嘱活動において、ジョワイエはかつてないほどの困難を経験することとなった。「何を歌いたいのか」という意思が見えてこない限り、三善氏は曲を書いてくれない。ジョワイエ内部でのテキスト選定作業は最終的に3年を要し、その間に一度は3案に絞ったものの、三善氏との討議で再び白紙に戻るなど、試行錯誤を繰り返した…そのようにして生まれた作品は、三善氏とジョワイエの、苦しかったこの3年間の歩みを全て注ぎ込んだ「結晶」となった。三善氏への委嘱活動を経験することで、ジョワイエはまたひとつ大きなハードルを越えたといえる。

 初演:1993年3月20日、クール・ジョワイエ第8回演奏会(愛知県芸術劇場コンサートホール)
再演:1999年10月30日、クール・ジョワイエ第10回演奏会(愛知県芸術劇場コンサートホール)

※この演奏会の曲目を収録した「いのちのうた」のCDがあります【復刻決定】


 「へんしんのうた」(作詩 作曲:三善 晃)(1993)

 「いのちのうた」の委嘱過程で、三善氏にはアンコール用のピースをお願いしていた。そしてできあがったのがこの「へんしんのうた」。<又は あいかわらずのうた>とサブタイトルが付いている。冒頭の楽想記号には[Allegretto] (joyeux)と記され、「ジョワジョワ」というヴォカリーズで始まるこの曲はまさにジョワイエのためだけに作詩、作曲していただいた曲である。「へんしん」とは「変身」「返信」と様々な意味が込められている。詩は「鳥に変わって・・・魚に変わって・・・人に変わって、なにをするんだ?おれはおれには変われない」と続く。ジョワイエは、ジョワイエであると認めていただいたようで、うれしい。ジョワイエにとっての真の愛唱曲である。

 初演:1993年3月20日、クール・ジョワイエ第8回演奏会(愛知県芸術劇場コンサートホール)

※この演奏会の曲目を収録した「いのちのうた」のCDがあります【復刻決定】


同声合唱とピアノのための組曲 「夏の庭」(作詩:佐々木幹郎 作曲:西村 朗)(2009)

 ジョワイエにとって4曲目の委嘱となる本曲は、いくつかの幸運と必然が重なって生まれたものといえる。「クール・ジョワイエ演奏会2007」で、西村氏の「永訣の朝」を取り上げた我々は、その深遠な音楽にたちまち虜になった。打ち上げに西村氏をお招きし、委嘱をお願いすると快諾をいただいた。我々の力不足もあり、テキストは氏に一任したが2008年、西村氏と詩人 佐々木幹郎氏との出会いにより生まれたのが本曲である。素晴らしい曲に対する我々の産みの苦しみは、団員はもちろん、指揮の高橋にとっても相当なものであった。
西村氏は本曲を起点として一連の連作*を発表することを表明されており、その意味でも記念すべき曲となった。

*本組曲、および混声合唱とピアノのための組曲「大空の粒子」(2010)、無伴奏混声合唱組曲「島の国」(2010)

 初演:2009年10月31日、クール・ジョワイエ演奏会2009(三井住友海上しらかわホール)
 再演:2011年10月16日、創立40周年クール・ジョワイエ演奏会(三井住友海上しらかわホール)

この組曲の楽譜が出版されています(全音楽譜出版社)

※この演奏会の曲目を収録したCDが発売されています


無伴奏同声三部合唱曲 「旅−悲歌が生まれるまで」(作詩:佐々木幹郎 作曲:西村 朗)(2011)

 ジョワイエ創立40周年の記念演奏会は三善 晃氏以来実に18年ぶりとなる作曲家の個展として、再度西村 朗氏を取り上げることとし、委嘱をお願いした。条件は「アカペラで」のみ。西村氏は一連の作品で意気投合した佐々木幹郎氏との打ち合わせを経て「旅、あるいは同行者」の三連詩、「悲歌が生まれるまで」の詩により4曲からなる本曲を完成させた。それはさながら『シンフォニーを聴くよう、作曲者のこの一作にかける思いが伝わってくる』(洪水企画:池田氏)ものであった。膨大なテキスト、表現の限界を極める速度指定に、途方に暮れる我々であったが、指揮の高橋、そして西村氏の”熱血”指導もあり、想いを伝えることはできた。ただ満足のいく演奏にはほど遠く、音楽の完成度を高めるべく、まだ見ぬ次の演奏会へ向けて練習は始まっている。果てしない高みを目指す旅人のように。

 初演:2011年10月16日、創立40周年クール・ジョワイエ演奏会(三井住友海上しらかわホール))

※この演奏会の曲目を収録したCDが発売されています


同声三部合唱曲 「ゆうぐれ」(作詩:大手拓次 作曲:西村 朗)(2011)

 40周年演奏会のアンコール・ピースとしてお願いしていたのがこの「ゆうぐれ」である。詩は西村氏の合唱作品の原点とも言える大手拓次より採られた。作曲の時期が東日本大震災と重なり、楽譜末尾には「慰霊の思いとともに」とのただしがきがある。初めてこの譜を手にしたとき、我々はすぐさま名曲の予感を感じ、それは確信へと変わっていった。ジョワイエはまたひとつ、大きな宝物を手にしたのである。

 初演:2011年10月16日、創立40周年クール・ジョワイエ演奏会(三井住友海上しらかわホール))

※この演奏会の曲目を収録したCDが発売されています


雪日讃 五題 −男声合唱とピアノのために−(編曲:若林 千春)(2015)

 40周年の節目を超えて、新しい音楽の方向性を模索していた我々は一つの挑戦をしてみようと思った。それはポピュラーソングの編曲という、およそ似つかわしくないと考えていた分野である。お願いした編曲者は若林千春氏(言っておくが男性である)。半ば飛び込みでお願いをしたところ、快く編曲を引き受けて下さった。演奏会が冬と言うことで、雪をテーマとした作品を5つ提案していただいた。聞き覚えのある「なごり雪」から、「夜空ノムコウ」などカラオケでしか歌わないような物まで、素敵なピアノ伴奏とともに珠玉の5篇が誕生した。練習の際には指揮の高橋から「カラオケじゃないぞ」「演歌歌いになるな」と叱責が飛んだのは言うまでもない。

 初演:2015年1月18日、クール・ジョワイエ演奏会2015(三井住友海上しらかわホール)


「樹木派」−男声合唱と複数(3人以上)の楽器奏者による−(作詩:高見 順 作曲:戸島 美喜夫)(2015)

 互いに気心の知れた作曲家、戸島美喜夫氏に新たな委嘱のお願いをしたのは40周年演奏会を終えた直後のことであった。戸島氏はずっと構想を温め、それが故・高見順氏の詩を基に構成される事がわかったのは演奏会の1年以上前であった。そして順次合唱スコアが我々の手元に届き始めた。今回の作品は合唱と発音原理の異なる3種類の楽器を組み合わせるという、我々が今まで体験したことのない独自の音楽世界であった。戸島氏はより洗練された音を求めて幾度となく楽譜を改訂し、また多忙な演奏家(戸島さや野、笹久保伸、青木大輔各氏)にお願いしたこともあり、全体像が見えたのは演奏会前日であった。ぶっつけ本番の演奏は団員S氏の提案による簡単な動きが付き、結果として意図せずにジョワイエ初のシアターピースとなった。

 初演:2015年1月18日、クール・ジョワイエ演奏会2015(三井住友海上しらかわホール)


「きみはトタン屋根の下ではなれ星を数える人ではない」
             (作詩:エドガル マラナン/訳詞:高橋 悠治 作曲:戸島 美喜夫)(2015)

 例によって我々は戸島氏にアンコールピースをお願いしていた。当初は既存の氏の作品を男声用に再編曲する予定だったが、何度も話し合いを持つ中「いい詩があるので、これを元に作らせてもらえないか」としてこの曲が完成した。フィリピンの(当時)反体制詩人、エドガル・マラナンの詩を氏の盟友である高橋悠治氏が訳したものを使った。伴奏は前述の3名。アンコールと言うにはスケールが大きくなり、急きょ独立作品として紹介させていただくこととなった。

 初演:2015年1月18日、クール・ジョワイエ演奏会2015(三井住友海上しらかわホール)


「アンパンマンのマーチ」/「手のひらを太陽に」 (2017)
         ・アンパンマンのマーチ 作詩:やなせたかし 作曲:三木たかし 編曲:若林千春
         ・手のひらを太陽に
   作詩:やなせたかし 作曲:いずみたく 編曲:若林千春

「雪日讃 五題」に続く、若林千春氏の編曲第二弾である。「手のひらに太陽を」はオーソドックスな編曲、
対して「アンパンマンのマーチ」はオノマトペとも思える冒頭の「ア・ン・パ・ン・マ・ン」のシュプレヒコールのバックは実はバッハのコラールを模倣しているという通好みのニヤリとする編曲。各パートにメロディーを持ってきていただいた若林氏の愛情(温情?)に感謝。

                           初演:2017年10月8日、クール・ジョワイエ演奏会2017(ウィルあいち ウィルホール)


 「伊東静雄の詩による交声曲  <<曠野の歌>> 」 (2019)
               詩:伊東静雄 作曲:若林千春

若林千春氏に委嘱をお願いする作業は、実は前回の演奏会前から進んでいた。「編曲ではない先生の作品を歌いたい」との要望に氏は明確に三つのプランを提案していただいた。いずれもずっと永く温めている構想とのこと。その中からジョワイエの実力も考慮し選択いただいたのが「知られざる詩人」伊東静雄であった。前年に完成した2曲は2018年の全日本合唱コンクールで見事ジョワイエを北海道の全国大会に導いていただいた。複数の審査員から「曲がいいですね」と講評されたのは初めてであった。
当初は二部構成、全8曲の予定が、氏の並々ならぬ情熱により三部構成、全13曲として結実した。これだけの大曲に恐れをなした我々ジョワイエはピアノ伴奏は作曲者本人に依頼し、氏は快諾いただいた。ソロが重要な位置を占める第二部は初めて外部よりソリストを招聘した。
それでも練習は遅々として進まず、直前の2ヶ月は週1回から週3回まで練習を増やし、なんとか歌いきることができた。結果として交声曲の名にふさわしいスケールの大きな作品となった。
                          初演:2019年11月4日、クール・ジョワイエ演奏会2019(ウィルあいち ウィルホール)


「見上げてごらん夜の星を」 (2019)
               詩:永六輔 作曲:いずみたく 編曲:若林千春      

若林千春氏にお願いしたアンコールピースはジョワイエの総意として選曲した坂本九の名曲「見上げてごらん夜の星を」。これを氏は「ドドンパ」で仕上げるという。
非常に重いテーマを歌った「曠野の歌」に対して、氏は「思い切り楽しく明るく歌って欲しい」との思いを込めた。
本番では氏の指揮、ピアノ伴奏は常任指揮の高橋と前年のコンクールで伴奏を務め今回も練習ピアニストをお願いした江上女史、2名のソリストに、何と譜めくりで参加の若林かをり女史(いうまでもなく若林千春氏の奥様である)のフルートも入るというオールスターによる演奏となった。
例によって指パッチン、足踏み、鳴り物あり、途中には某有名テーマパークのネズミキャラクターのテーマ曲も忍ばせるなと仕掛け盛りだくさんの楽しい編曲となった。

                          初演:2019年11月4日、クール・ジョワイエ演奏会2019(ウィルあいち ウィルホール)


谷川俊太郎の氏による詩歌集 <<生まれたよ ぼく>>(2022)
               作詩:谷川俊太郎 作曲:萩 京子     

ずっと委嘱活動を続けてきたクール・ジョワイエ、50周年も是非委嘱をということでたどり着いた作曲家が萩京子氏だった。テキストとして谷川俊太郎氏の「せんそうしない」を提案したが、その時点では男声合唱のイメージを持つことが出来ず、できあがったのは同じ谷川氏の詩にによる3声×2群から成る「生まれたよ ぼく」であった。
一方でこの曲を披露すべく企画した50周年演奏会はコロナウイルス感染拡大による合唱活動の自粛の時期と重なり、演奏会も1年延期せざるを得なかった。
「生まれたよ ぼく」の練習を重ねる中で萩氏にもっと曲を書いて欲しいという要望が高まり、多忙な氏にご無理をお願いした。そこにロシアとウクライナの戦争が始まり、それが氏を動かし「せんそうしない」、そして「ありがとう」という2曲が完成した。
演奏会当日はワンステメンバーを含め40名弱の人数で演奏し、「歌いながら泣けてきた」と絶賛する団員が相次いだ。本来は演奏者が泣くとは恥ずかしい限りだが、氏の音楽はそれほど私たちの心を揺るがしたということである。

                          初演:2022年9月25日、クール・ジョワイエ演奏会 創立50周年記念演奏会(三井住友海上しらかわホール)



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